収蔵庫・壱號館

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宇部市民会館(渡辺翁記念会館)
        
1937年,山口県宇部市,村野藤吾,現存(撮影:1983年(改修前))

     
     

 この当時、型破りのスケール感を打ち出す建物が存在し得たことに、まず驚いた。昔から、たたずまいを美点として据えるヒューマンスケールの建物ばかりが日本の建築だという固定観念は、あっけなく砕け去る。また、それほど稀有な建築であったのかもしれないが。
 しかし、大味になるどころか(よく言われる通り)当然ながら近接した視点での配慮も周到で、高密度なディテールが施されている。
 まだ、改修工事でタイルが貼り替えられる以前の「塩焼きタイル」がそのままの外壁は、鈍く不均質な光沢が全体を覆っていた。やや紫系がかった暗い茶のタイルには所々微妙な凹凸があって質感に奥行きが加わる。さらに歳月を経た風格と存在感まで含めて、当初から村野の意図通りだったのだろうか。
 外壁とも開口部ともつかないサッシュの廻りには、当初、外壁の色に合わせた茶色のガラスブロックが用いられていたそうだ。外壁と同質でありつつ光を導きいれる鉱物素材−光を通す煉瓦−、その答えが茶色のガラスブロックということか。(写真のガラス素地色のブロックは後に換えられたもの)
         
         

         
 ホワイエは、無梁版をマッシュルーム形柱で支えるフラットスラブ構造を用いている。ホール内部まで含めて、村野ならではの工芸的なセンスにあふれている。
         
               
 建築にとってメッセージ伝達は果たして可能か・・・、こうした試みがあったかどうかは分からぬが、炭鉱従事者のレリーフ、建物前面の6本の柱など、産業基盤を確立した渡辺祐策を記念する意図が、はっきりと読み取れる。
                       
 私事だが、物心ついた数年間は、私も工場勤めの一家として宇部で暮らしていた。工場地帯のある海岸に接近しながらも、起伏ある美しい環境は、今もって鮮明だ。炭鉱とは無縁ながらも、恩田の炭住を社宅として住み、常盤公園で遊び、ちまき屋デパートに連れて行ってもらうのが、子供には大きな楽しみだった。空港が出来る以前の砂浜でカブトガニを見つけた。
 そういえば、大通り沿いの銀行の、高い自動シャッターが「ギーギー」音を立てながらゆっくり降りていく様を見て、恐怖感を味わったりしたものだが、どうやらこれも村野藤吾設計の銀行らしい。
 とうにリタイヤした父親に聞いたら、昔のこと、なんとこの市民会館の傍の樹木の根元に、死んだ飼い犬を埋めたらしい。こうした、取るに足らない小さな思い出も、もしかしたら渡辺翁の恩恵かもしれない。
| 1930年− | 14:12 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
自己コメントです。
ちなみに昔の宇部の様子(銀天街)を、こちらにアップしました。2009.6.8

「宇部!それっちゃ!それいね〜!それかね〜!」
http://ubecha.exblog.jp/
| Kikuchi | 2009/06/08 6:58 PM |
遊びに来ました〜♪
お写真ありがとうございます

こうしてみると記念会館って、すばらしい宇部の財産ですね
今うしろにマンションが建っているのがちょっと残念です
| リコ | 2009/06/18 11:28 AM |
リコさま、お出まし頂きありがとうございます。
「宇部!それっちゃ・・」では宇部の町並みなど、懐かしみつつ楽しませて頂いています。

>こうしてみると記念会館って、すばらしい宇部の財産
戦前からの宇部の先進性を伝える証拠ですね。そして今や、日本にとっての重要な宝ですが、宇部市地元の誇りとして、自然にかつ大切に使い続けられているところが何よりも素晴しいと思います!。

>今うしろにマンションが建っているのがちょっと残念です
その言葉は写真を撮りに赴いた方から、よく耳にします。
それと、改修によって外装タイルも随分きれいになり、私が撮ったタイルの雰囲気ではなくなったような気がしますが・・・。

今後とも、よろしく〜。
| Kikuchi | 2009/06/18 9:37 PM |
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