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旧・富岡製糸場


 1872年,群馬県富岡市,E.A.バスチャン,現存(撮影:1981年)

 有名な明治初期の建物は一度見ておかねば、と期待たっぷりに訪れたら、普通に操業中だった(撮影当時のこと)。とうに立派にお化粧直しされた史跡か記念物に納まっているか、ことによったら廃屋同然に・・・、などと変な想像を巡らせてていたのだが、特段ほころびた様子もなく、築100年以上経過しているとは思えないほど綺麗であった。失礼ながら拍子抜けした。表面的な見栄えだけではなく全体がしっかりしている。これよりも後に建ったもののボロボロの末期を迎えた他の建築との違いは一体何なのだろうか?

        

 言い換えれば、木と煉瓦の建物が、なぜ長寿を保つか? 調査研究は様々あろうが、私個人が見ても、いくつか要点が思い浮かぶ。
 ここはまず、明治政府の模範工場なのに主体構造は木材のようである。石造の高い基礎の上に30センチ角はありそうな太い柱が林立し、柱を挟む太い梁が架け渡され、小屋組みは洋式の木製トラス(三角形の組合せ形状)が、強さを発揮する。でも、どんなに太くても木材で大丈夫か、という疑問が沸いてしまう。木材については、法隆寺のように千数百年経ても大丈夫という話も聞けば、高度成長期以降頃の木造住宅のように、きっかり25年で寿命を向かえた、という現実もよくある話しだ。
 この疑問への答えのヒントのひとつとして、「製糸場」という建物用途が大きく関係しているのかも知れない。つまり蚕糸製造に必要な「換気」が、建物の維持にとっても好条件に働いたのではないか、と推測する。バスチャンの設計では、換気と採光を調節出来るように、外側を鉄扉とした二重窓がたくさん取り付けられた。また、壁をなす煉瓦という熱容量の大きい(熱しにくく冷めにくい)性質が、ある意味で断熱材のような効果を発揮したのだろう。これで湿気が抑えられ、腐朽の阻止につながったのではなかろうか。但し、これも人間によって建物が「使われ続ける」ことが大前提。もちろん、大きな地震災害などに見舞われなかったということもあろうが、最もラッキーだったのは、製糸場が当初は官営でありながら、民営化後も用途をあまり変えず、ずっと操業され続けた点が大きい、と思う。
 さらに大切なのは、今話したいわば換気による「建物の健康維持」とほぼ同じことが、建物内部で生活する「人の健康維持」にも言えることを、強調したい。

             

 昭和14年以降、富岡製糸場は片倉製糸紡績会社(現・片倉工業蝓砲砲茲辰徳犇箸気譴拭J卅匚業といえば、かつて埼玉の大宮にも工場を所有し、現在はコクーン新都心となっている。ネーミングが「コクーン」(COCOON=繭) なのも、これで納得がいく。
 私が勤める住宅会社も、この一角の住宅展示場に小さなモデルハウスを持っているので、週に何度か、新都心に通う。こういう住宅を企画する、こういう同僚がいる会社で、健康な暮らしを求めるお客様との打合せも楽しく、結構充実している。

| −1899年 | 19:47 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
やっぱり、建物を長生きさせるには、換気なんですね。

検見川送信所も、鉄板で打ち込まれて、空気が遮断されているように見えるですが、実は鉄板の打ち込みはラフ。映像でも確認できるかもしれませんが、一部すきまがあるんです。それがよかったのかもしれませんね。

追伸

ロハスな家も拝見しました。きくちさんデザインのこだわりの家も拝見したいです。
| 久住 | 2008/12/02 1:38 AM |
久住様、コメントありがとうございます。
検見川送信所の内部は、ビデオからも「乾いた」感じが伝わってきて、安堵しました。
たぶん、コンクリート躯体の厚みが今日の建物に比べて、ぶ厚く作られたことと関係ありそうな気がします。

>きくちさんデザインのこだわりの家も拝見したいです。
近々、広い土間を持つ古民家的な和テイストの住宅の完成見学会が予定されています。13日からだそうです。(でも、場所が埼玉の伊奈町なのでちょっと遠いかな)
その後も、年末にかけて毎週のように見学会が続くようです。と、宣伝兼ねて。
| Kikuchi | 2008/12/02 11:39 PM |
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