収蔵庫・壱號館

日本の20世紀をメインとした建築画像の保管庫
<< 大原美術館 | main | 倉敷国際ホテル >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | pookmark |
倉敷アイビースクエア

    
1974年(原建築:1889年),岡山県倉敷市,浦辺鎮太郎,現存(撮影:1981年)

 明治時代に創設された倉敷紡績の旧工場は、第二次大戦中に軍需工場化し、終戦と共にここでの生産活動は途絶えた。その後、倉敷からその外へ向けた貢献をなすべく、ホテル,ホール,記念館などを備えた複合施設としての再生計画が浮上し、リノベーション事例の先駆となった。
 アイビースクエアは、必ずしも元工場のオリジナルの真正さだけを目指した保存活用ではなく、地域環境との調和を目指した創意も加えられているが、それは、事前の十分な調査を踏まえて導き出された回答でもある。
 こうして再生した建物からにじみ出る、エキゾチックな魅力と居心地の良いひと時に満足した方も多いと思う。その一方で、(当時を思えばむしろ普通であったはずの)ガチガチの計画論で固められたモダニストの発想がてんで及ばないような地平でデザインが衒いもなく散りばめられていることにも気づく。浦辺の建築全般にそうなのだが、私から見れば、こうした一歩間違えば悪趣味なまがいものに陥りかねないような危ない橋をさらりと渡っているようにも思える浦辺鎮太郎の建築に対しての「どうして?」という思いは、払拭されずにいた。

 戦前の浦辺鎮太郎について調べると、1934(昭和9)年に京都大学を卒業し、同期生には西山夘三もいた。「DEZAM(デザム)」に所属して建築運動に染まっていたことが語られている。
 1920年の分離派に始まって以降の、建築運動が勃興しては離合集散した時代を、浦辺も生きている。自身が語った小文を読むと、高邁な理論に埋没し「頭ばかりで手の動かない人間」(=実務が出来ない)になっていくのを、ある時期にしきりに反省したようだ(*1)。
 恐らくは、郷里倉敷に戻り、先達の薬師寺主計や大原総一郎の精神に触れたこと、つまり倉敷という無名の伝統的町並への敬愛の念に触れたことが、観念論の暗闇から脱出し目覚めるひとつの要因であったのかも知れない。そして等身大の視点から人の住む環境を見据え、モダニズムの教義に煩わされることなく、時に応じて装飾をも交えながら必要なデザインを施すことも辞さない姿勢が生み出されたのではないか、そんな想像がよぎる。
 20世紀は、総じて人の生きる現実と改革し理想に到達するための理論の狭間で誰もが苦しんできた。しかしどうあれ行動をもって打開しなければならないとするならば、浦辺は倉敷という場を得ることによって連続性を持った活動で成果を生んだひとりであろう。
 ただ、西欧の様式が混入を敢行した「倉敷市庁舎」については、その大衆迎合的とも解されかねないまでの勇気を論ずるのは、私には力不足か。降参するしか無いような気分にさせられるが・・・。建物ひとつに近視眼的に目を縛られてはいけないと教えられているようだ。

*1:「私の受けた建築教育」浦辺鎮太郎(『建築雑誌』S.51−4 No.1106)

| 1970年− | 14:25 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
スポンサーサイト
| - | 14:25 | - | - | pookmark |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://20thkenchiku.jugem.jp/trackback/169
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
叢書・近代日本のデザイン 25 [大正篇]
叢書・近代日本のデザイン 25 [大正篇] (JUGEMレビュー »)
分離派建築会,関西分離派建築会
「分離派建築会」作品集3刊の、初の復刻本が刊行されました。末尾の解説文は私が担当しました。
収蔵庫・壱號館
ここは本家サイト《分離派建築博物館》背 後の画像収蔵庫という位置づけです。 上記サイトで扱う1920年代以外の建物、随 時撮り歩いた建築写真をどんどん載せつつ マニアックなアプローチで迫ります。歴史 レポートコピペ用には全く不向き要注意。 あるいは、日々住宅設計に勤しむサラリー マン設計士の雑念の堆積物とも。
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
モバイル
qrcode
LINKS
PROFILE