収蔵庫・壱號館

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叢書・近代日本のデザイン 第25巻

 建築画像の話題でなくてすみません。ここで新刊書籍の紹介です。
 1920(大正9)年,'21(大正10)年,'24(大正13)年に岩波書店から3回刊行された分離派建築会の作品集の復刻本が、ついに刊行されました
 これは、明治から大正のデザインの流れを文献資料の再現で追う、ゆまに書房の画期的なシリーズの大正篇、通しで第25巻が分離派建築会の内容となります。(もちろん分離派以外にも関心をそそられる復刻企画がめじろ押しです。)

 日本初の建築運動として1920年に結成された「分離派建築会」のことは、あの有名な宣言「我々は起つ。
過去建築圏より分離し、総ての建築をして真に意義あらしめる新建築圏を創造せんがために。・・・」
と共に知られるところです(*1)が、戦後、建築史の俯瞰図の一コマとしての位置が付与され、それ以来、詳細を曖昧としたまま不動気味の観がなんとなく濃厚・・・・・でしょうか。
 
 分離派の旗揚げの目的は、模倣性という病根を絶ち「創造」を目指す意気揚々としたものでしたが、世界的なデザインの大転換期とも時期が重なります。
 一例挙げれば、分離派発足とほぼ同時期の地球の裏側では、ル・コルビュジエが自らの『エスプリ・ヌーヴォー』誌を通じて「住宅は住むための機械」と看破するなど、圧倒的な影響力を及ぼしだす矢先でした。
 分離派の面々の中にも洋行してドイツの最新の建築動向を視察、紹介する者が現れましたが、模倣性に堕することなき「自己」を追い求める視点と、社会に目を向け普遍化に進路をとるモダニズムとの葛藤は、困難な課題として重くのしかかりました。
 しかしながら、明治期以来の様式移入から脱却し芸術としての建築の地位を確保しようとする極めて国内的な文脈と、西欧の近代化の文脈が初めてクロスオーバーした地点の葛藤状況の中においてこそ、ある意味で(西欧の「表現主義」とも異なる)日本固有の自己表現が胚胎していたのかもしれません。
 要するに、分離派は、いまだ検討課題多しと思われます。

 おっと、書籍の話しに戻ります。本来、現代にもつながる基本的な文献資料は、出来るだけ物理的事情に妨げられること無く、手近に多くの視点から解読されるべきでしょう。しかもできるだけ鮮明な状態のものを。不鮮明なマイクロフィッシュにいらいらした方は結構多いはず。特に分離派の作品集の場合は、有名なことがかえって仇になったのか、図書館では完全本が少ないようです。文献資料にまつわるフラストレーションを解消に導く企画にまずは拍手。

 惜しむらくは値が張る点とも見えますが、作品集3刊分の表表紙から裏表紙までがそっくりそのまま1冊にまとめられており、ぎっしりつまった内容の濃さを考えると「お買い得」そのもの。
 また、学術向けの企画なので書店の店頭には置かれない書籍とのことですが、これもマニアックな私の色眼鏡で言うなれば「一家に一冊モノ」。もちろん一般に購入すること可です。
 そこで、関心のある方はゆまに書房HPにて、ネット購入が近道のようです。こちらに詳細とカタログダウンロードのページもあり。   Amazonならこちら。

 どんどん宣伝口調がエスカレートしてますが、最後に白状します。この第25巻の末尾の解説文は、不肖ながらこの私が仰せつかった次第。入魂の思いで執筆いたしました。


        *1:音楽方面でも有名だろうか。'80年代の戸川純らのユニット「ゲルニカ」のCD「新世紀への運河」の帯
          に付いたレトロチックパロディなコピー「・・・すべての音楽圏より分離せんがために!!・・・」は、本をただ
          せば分離派の宣言です。一応。
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