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    2010.09.11 Saturday

    旧・メルパルク日光霧降

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      1996年,郵政大臣官房施設部, ヴェンチューリ,スコット・ブラウン・アンド・アソシエイツ 他,栃木県日光市,現存(撮影:2010年)

       かつてのポストモダニズムがどれほど果敢な攻撃的行為であったのか、これを見れば納得できるかも知れない。
       '70〜'80年代を席捲し、日本でも流行的な盛り上がりを見せたポストモダニズムの旗手ロバート・ヴェンチューリによる、「正統なる」ポストモダニズム建築。時代の熱気が過ぎ去った「祭りのあと」に、今なおらんらんと光るむき出しの刃に遭遇してしまった。

       人気の少ない道路を滑りぬけるマイクロバスに身をまかせ、到着すれば一見するなり、確信犯的に感覚を逆撫でする「俗悪さ」「アイロニー」の毒を目いっぱい吸収する。そして私達は癒されない頭を抱えて屋上に運ばれ、書割りのような露天風呂で身体だけ癒す。ついさっき見たばかりの日光ユースホステルの純正モダニズムとの落差に打ちひしがれながら。それはそれである種の「悦び」はあるが・・。
           
       外観:「への字」の破風板が二次元的に貼り付いている。しかしそれが反復されたことによる三次元的軒下空間は、現実的な空間とは異なるものなのだ。
           

       内観:花飾りの電柱。だからこそ、ここはメイン・ストリートと理解する。だが、ほぼ無人に等しい。

       ヴェンチューリは、それまでの合理性と機能性という教条の束縛に対して、「Less is bore(少ないほど退屈)」とミースの箴言を皮肉っては対抗策に打って出る。禁欲的で純粋な美意識よ、如何ほどのものか。退屈なばかりではないか。というわけで、ハイブリッド(混成的)で折衷的な、換骨奪胎を伴った様式的装飾と象徴性の復活を目指したのであった。著書『ラスベガス』において、商業建築にヒントを得て「装飾された小屋(decorated shed)」と「アヒル(duck)」を提示したことは良く知られる。この日光の建物では、「日本人が誰ひとり思いつかない日本的モチーフ」による「装飾された小屋」が現出されている。
                  

      ただ、そうは言っても装飾は良く見るとやっぱりアメリカ的だ。ロイ・リヒテンシュタインのポップアートの「網点」を彷彿とさせるなど、当然ながら作品性はキープされている。
       そして、20世紀末の建物としての最終的な到達点は、無残なまでに装飾という「機械」に占められた結果としての「不在」の様相であろうか。つまり日常的な意味の世界が喪失された先の。彼方を見て並んだマッサージチェアのように。


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