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同潤会 上野下アパート
 
1929年,東京都台東区,同潤会,現存(撮影:2010年)

 いつのまにかRC造の集合住宅も最後の1棟になってしまったそうなので、見に行くことに。しかし、そこにあるのは営々と続く暮らしであり、年輪を重ねつつも変わらない尊ぶべき日常の姿なのである。カメラを向けるのさえなんとなく躊躇される。当たり障り無いアングルを一応心掛けたつもり。
 古びていても生活感をあまり露呈しない風景は上品でさえある。恐らくそこにはバルコニーの有無が関っていよう。

 今日の一般的な集合住宅像と言えば、バルコニーが張り出した画一的な姿しか思い浮かばない。それでもバルコニーが必要な理由は、主に避難上の要請、そして各住戸個別に外部空間を専有していなければ売るに売れない事情による。物干しスペース、そして室外機置場として。
 しかし、細かく調べたわけではないが、同潤会が計画した当時のRCのアパートにおいてバルコニー付きはむしろ少数だったように思う。でも、その分空地が確保され、立面デザインにも幅が生じていたのではないだろうか。
 上野下アパートもそうであるが、屋上が共有の物干し場として利用されている。今日、屋上が物干しスペースとなることはあまり無いようだが、同潤会が屋上を、集合して住まうひとつの装置として考え出したことは画期的だったに違いない。コミュニケーションを兼ねた実用的な空間であり、さらに、腰壁を目隠しのように高く立ち上げれば、洗濯物も隠せるし景観上もプラスに働く。まさに合理的。

 今日の、多くの「プライバシー配慮型高級マンション」のバルコニーによる洗濯物を露呈した街路景観については、戦前の同潤会アパートの段階で既に解決済みの問題であったようだ。にもかかわらず、である。もしかしたら大多数の「集合して住まう」ことへの意識の変化こそが、同潤会的なるものを窮地に追いやったのかも知れない。


| 1920年− | 20:38 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
上野下、もう壊されたものだとばかり思ってましたがまだあったのですね。数年前までこちらにあった集合住宅、昭和25年の形式47Bではバルコニー部分に洗濯物を干す空間が広くなっていましたが、なんと後年そこが風呂場に改装されている部屋ばかりでした。

洗濯物は皆さん屋上まであがって干しておられたようです。

当初入居者は地域ではいわゆるインテリ層やハイソに近い方が多かったのですが、同潤会の系譜を引く高級感から公団住宅へつながる大衆化への変遷が、51Cの誕生とは別にどこかにあるような気がします。
| yamatosh | 2010/10/27 7:30 AM |
yamatoshさま、貴重なコメントありがとうございます。

>数年前までこちらにあった集合住宅、昭和25年の形式47B
そういうタイプがあったとは知りませんでした。しかも数年前まで現存していたとは。その頃と言えば「都営高輪アパート」を思い浮かべますが、それのバルコニーを有する変種でしょうか。

「昭和住宅物語」を久々読み返しつつ思うに、私も明快に言えないまでも、同潤会からのDNAは受け継がれているように感ずるのです。
| Kikuchi | 2010/10/28 10:24 AM |
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