収蔵庫・壱號館

日本の20世紀をメインとした建築画像の保管庫
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旧・天下茶屋郵便局電話分室(NTT西日本 天下茶屋第1ビル)

 
1927年,大阪府大阪市,逓信省(山田守),現存(撮影:2006年)

 今から4年前、グーグルの航空写真と山田守作品集の図面を照合したところ、図面の輪郭そのままに建物が存在していることに気付き、私はドキドキしながら大阪に急行した。便利な世の中である。
 行ってみると、サッシュがアルミ製に交換され一部増築された形跡を示すものの、奇妙な外観の建物が、私の興奮もどこ吹く風とばかりに無言で建っている。私は画像をすぐさまHPに載せた。

 「旧・天下茶屋電話分室」は1927(昭和2)年に竣工した電話局舎であり、山田守の設計による現存する逓信局舎としては「旧・門司郵便局電話課」(1924年)に次いで古い建物ということになる。しかもこれは業務に関連して使用されている現役の建物だ。
 その後は1929(昭和4)年に「旧・千住郵便局電話事務室」が建てられ、こちらも曲面による外壁をスクラッチタイルで被い尽くした傑作として残っている。
          
 何といっても、この建物は分離派山田守のトレードマークたる曲面使いを建物の頂部周辺つまりパラペット(屋上の腰壁)に集中させている点に特徴があり、さらに貼られた黒っぽい配色のタイルには何とも言葉を失ってしまう。摩訶不思議な印象・・・。
 山田が(黒褐色から黒色など)暗い色調のモザイクタイルを外壁の部分に貼った事例を拾い上げてみると、「新右衛門町郵便局」(1926年)や先頃取り壊された「旧・甲府郵便局電話事務室」(1931年)が挙げられるが、おそらく天下茶屋電話分室もこれらと同系統のイメージで設計されたのであろう。さらに戦後に至っても黒味を帯びた泰山タイルが「京都タワー」(1964)に用いられた例からして、こうした暗い色調のタイルにそれなりの思い入れがあったものと推察される。ホワイトボックスのイメージやぬめるような輝きを指向したタイルの使用ともまた違う。
   
 こうした建物の持つ不思議な説明不能の印象は、概して山田守の建物には共通する。理屈を解き明かそうなどと試みても徒労であって本質的な説明に結びつかない部分がある。
 そういう意味では、昭和初期のかなり早い段階から合理主義の限界を無意識的ながら示していたとするのは穿った見方に過ぎるだろうか。やはり、建築とは人間の作為を離れては存在し得ずどこかに不合理な個性が混入するものだという真実を、はからずも建物が語っているようでもある。 




| 1920年− | 20:24 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
初めてメールいたします。
本日、本駒込周辺の近代建築を見て廻った際、土浦亀城設計の理化学研究所駒込分室(旧・理研43号館)が解体工事に入っておりました。まだ、外壁等には手が付いていませんが、ガラスは一部撤去がはじまっており残念です。
| ミロタカ | 2010/11/07 5:20 PM |
ミロタカさま、コメントありがとうございます。
やっぱりでしたか。どこからともなく解体工事の情報が聞こえていましたが。ひょっとして、もう残る戦前の建物は土浦自邸くらいかな。さびしいかぎりです。
| Kikuchi | 2010/11/11 6:29 PM |
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