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足利市庁舎別館

     
1953年,栃木県足利市,石本喜久治(石本建築事務所),現存(撮影:2014年)

  私も属する某近代建築愛好会の会員の中で、Oさんは飛びぬけて多くの建物を巡り歩いておられる。先日もフェイスブックに足利市庁舎別館の画像をUPされていたのを拝見した。そして驚いた。
 石本事務所のHPにはちょっと新古典的な外観が一面だけ掲載されており、どちらかといえばおとなしい外観だなと思う位であった。しかし実際のところ、敷地が角地にあることが原因しているせいなのか、それぞれ異なる表情に分節された表側ファサードの各立面が一挙に見渡せるので、一望すると上の画像のようにむしろそのハイブリッドさが強く印象付けられる。まるで時代を間違えて出現したポストモダニズム建築のようにも見えて、正直頭がくらくらする思いだ。

 そんなわけで驚いた私は早速休日を利用して建物を訪れた。余談だが足利は歴史のある見どころの多い町であった。


       

 足利市庁舎別館は設計した石本事務所にとって、戦後の建築として記念碑的な意味合いがあると見える。つまり戦後に組織事務所として再スタートを切る途上にあって、庁舎建築を手広く手を染めるようになるきっかけになった建物のようなのである。

 次のようなエピソードが伝わる。足利市は庁舎の設計者選定にあたってまず建設省営繕局局長川合貞夫に相談した。川合は石本事務所のOBであったので、勿論石本事務所を訪ねるよう勧めた。そこで当時石本喜久治の片腕的な存在の長野八三二専務が、よそを廻らせることなく設計委託を取り付けたのだそうである。因みに長野は後に石本建築事務所の社長を務めた人物。長野と石本喜久治の最初の出会いは、石本が審査員を務める朝日新聞社主催の住宅コンペにおいて、参加した長野が入選を果たしたところから始まったという。

       

 
          

 足利市庁舎別館の全面石貼りで新古典主義的なまた重厚な外観は、戦前のデザインを踏襲しているように感じられた。終戦後いきなり日本の建築デザインがモダニズムに転換したわけではないことを示している。外装石材は、ある人に聞いたら富国石などの擬石ではないかとのことであった。(石本喜久治は分離派建築を発端にモダニズムの建築を受容推進してきたことで知られるが、事務所は経営上様々な仕事を請け負う必要があったので、必ずしもモダンなものばかり設計できたわけではなかったようである。)
 しかし戦前を引きずるこの建物以後は、特に長岡市庁舎など、シャープで軽快なモダニズムの建物がデザインされるようになった。

 正面向かって左側のファサードには、林立する付け柱の間に小さなバルコニーがアクセントとして取り付けられている。この前々年に竣工した「工業繊維大阪支店」(1951)にも同様のものが見られる。
 内部においては最上階の天井が目を惹く位であろうか。天井面に斜め格子のリブが巡らされている。石本が戦前から持ち合わせていた装飾感覚の、数少ない表れだろうか。

       


          

 石本喜久治の建築作品は残存例が少ない。そんな中、石本存命中の建物であり関与の可能性が大きいであろうと考えられる建物がほぼそのまま残っていることは、喜ばしい限りである。築60年を超える庁舎が、しかも現役で使用されていることは素晴らしい。担当した所員が誰なのかについても、ちょっと気になる。
 なにはともあれ、末永く使い続けられることを祈りたい。

       



 
| 1950年− | 17:29 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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