収蔵庫・壱號館

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検見川無線送信所

1926年,千葉県千葉市,吉田鉄郎(逓信省),現存(撮影:2008年)

 吉田鉄郎設計の検見川無線送信所が、DOCOMOMO Japanの選定建物に加わった。もう、ただの廃墟ではないのだ。
 DOCOMOMO Japanでは重要なモダニズム建築を「100選」としたが、実は毎年約10件程度追加されてもいる。今回で「135選」になるとのこと。検見川送信所も含む10件の建物が2007年度選定分として5月の総会で会員に承認された後、いくつかの他の承認手続も済んだとのことで、昨日、兼松幹事長から公表の許しを得た。

 今回、検見川送信所を推薦したのも実は私である。送信所については現状では廃墟にしか見えないほどの傷みようで、また東京中央郵便局のようにシンプルな矩形格子によるよく知られた吉田鉄郎の作風とも一見異なって見えるためか、選定に至る過程では首をかしげる向きも無くは無かった。(送信所でも東京中郵でも、吉田は合理性を踏まえた上で極限まで無駄をそぎ落とすように突き詰めたデザインを行った点では全く共通していると、私は考えている。)
 しかし私は、検見川の場合、吉田鉄郎特有の行き届いたデザインの素晴しさを兼ね備えた上で、さらに他に無い価値として、国際通信を主たる目的とした「無線送信所」という新しいビルディングタイプ(=建物用途)の嚆矢たる建物であること、しかも近代技術に呼応して合理的にデザインされた最も古い現存事例であることを推薦の理由として強調した。別に思い入れだけで主張してきたわけではない。
 こうして建物用途や建設地域、設計者などに大きな偏りが生じないよう公正かつ慎重な討議が繰り返された末に、京都会館で行われた総会で検見川送信所も選定建物として紹介されるに至った。実のところDOCOMOMOが選ぶに相応しいもっと保存状態の良い名建築は他にもまだまだある。しかしこの権威ある国際組織が、今回敢えて、DOCOMOMO憲章にもある「重要な建築物の取壊しや美的価値喪失の危機に対して警鐘を鳴らすこと」という精神を重視し、現に保存活動を行っている市民団体が存在することにも言及しつつこの建物を取り上げたことについては、DOCOMOMOとしても意義ある見識の発露であろうし、保存活動に携わる私としても嬉しくまた心強い援護射撃と受け止めた。
(右写真:総会でスクリーンに映写して紹介される検見川送信所)

| 1920年− | 20:39 | comments(4) | trackbacks(1) | pookmark |
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| - | 20:39 | - | - | pookmark |
コメント
「検見川送信所」の保存活動を始めるに当たって、僕が重要だと思ったのはいくつもの既成事実を積み上げることだ、と思いました。そして、最後に利活用に結びつける。

それには理解者を募ることだ。自分一人の声は小さいけど、声という声を集めていけば、大きな声になるはず。きっと同じような考えを持っている方はいるはず。そんなときに、きくちさんの素晴らしいHPにめぐりあったのです。

きくちさんにお会いし、いろいろ御指南いただき、僕らが思っていることがひとつ大きな形で実を結んだことを大変うれしく思います。

きくちさんの熱が国際的な機関を揺り動かしたのでしょう。大きな力をいただいたわけですから、大いに活用しなければいけませんね。身が引き締まる思いです。

| 久住コウ | 2008/07/02 12:34 AM |
まさやんです。ごぶさたしております。
この吉報をうかがい、小躍りしているうちの一人です。
きくちさんの熱意が実を結び、そして知る会としても大きなエポックとなりました。実に素晴らしい!
知る会メンバーの一人として、きくちさんのご尽力に感謝申しあげます。

ところで、さっそく知る会のホームページにも掲げたいと思っているのですが、それはOKなのでしょうか。それともまだ時期尚早でしょうか?
| まさやん | 2008/07/02 1:40 PM |
>久住コウ様
選定された重要なポイントは、地元の方々が熱心に運動を展開していることであって、これ無くしては選ばれることはあり得なかったと思っております。
つまり、専門家も含めて多くの人々が応援してくれている証しだと思います。
これからもがんばりましょう!
>まさやん様
まさやん様が作って頂いた精緻なるサイトが人の心を動かしたものと考えております。ドコモモ選に入ったのもその成果のひとつでしょう。
もちろん、こうして公表した以上は送信所保存のためにどんどんPRするなど活用して頂ければ有難いです。
| Kikuchi | 2008/07/02 6:08 PM |
きくちさま

アドバイス、ありがとうございます。さっそく「知る会」HPにDOCOMOMO選の件をアップしました。
ただド素人の作文なので齟齬があるかもしれません。お忙しいところ恐縮ですが添削していただき、間違い箇所がありましたらご指摘いただければ幸いです。

よろしくお願いします。
| まさやん | 2008/07/03 12:01 AM |
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