2023.05.10 Wednesday

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    2012.02.24 Friday

    三菱倉庫 江戸橋倉庫ビル

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      1930年,東京都中央区,三菱倉庫株式会社,非現存(上:1992撮影,下3枚2012.2.24撮影)

       ちょうど都内で用事があったので、帰りに三菱倉庫の方に足を伸ばしてみた。今日撮ったのは下の3枚。塔屋の部分には囲いが掛けられていた。長年親しまれた部分であるだけに取り外して新しい建物で再利用するのだろうか。
       名残りを惜しむべく建物に近寄ってみれば、石積の低層部に装飾的な手摺やアーチ窓など、様式建築の延長上の簡素化された姿が主調を成していことがわかる。表現主義的(否、アール・デコ?)な感覚は塔屋に集中している。
       ここ江戸橋倉庫は、明治初期から「七ツ倉」と呼ばれる煉瓦倉庫が立ち並んでいたという。そんな三菱の伝統を伝える土地にあってこの大型汽船を思わせるこの塔屋を見るならば、遠い明治の昔、海運業で政府に食い込み八面六臂の大活躍を演ずる創業者岩崎弥太郎に思いを馳せてみたくなる。ならば、たとえ建て替わっても、周囲に埋もれた当たり前の景観を呈して欲しくはない、と願うのだが・・・。












       
      2012.02.10 Friday

      西田幾多郎歌碑

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        1951年,神奈川県鎌倉市,坂倉準三

         建築家坂倉準三と鎌倉の関わりはあの近代美術館だけではない。坂倉による(たぶん)唯一の彫刻作品が七里ヶ浜、国道134号線沿いの鋪道に立っている。

         晩年をここ七里ヶ浜を見渡しながら過ごし1945年に没した西田幾多郎を顕彰する歌碑が、有志の発意によって建てられることとなった。そして坂倉がそのデザインを担当したのである。
         『美術手帖』(1951年8月号)にこの計画の概略と模型写真(下のモノクロ画像)が掲載されていたので、以下に一部引用する。

        「・・・鎌倉市姥ヶ谷海岸の砂丘に建築家坂倉準三氏の設計による高さ六尺五寸、幅三尺八寸の歌碑が建立される。この歌碑のフォルムは名著「藝術と道徳」から意味づけられた永遠の美=永遠の女性を象徴しており、由縁ある永眠の地鎌倉で詠んだ歌

          七里浜夕日漂ふ波の上に
          伊豆の山々果し知らずも

        の一首が碑の前面に刻まれている。・・・」

         当時は、鎌倉市によって、この碑を中心とした100坪規模の西田記念公園の建設計画があったことも記されていた。

         コルビュジエに師事した坂倉を想起させるというよりは、どことなくアルプの彫刻を思わせるのはなぜだろう。歌を囲んで刻まれている八芒星の意味するところは何であろうか。記事にあるように永遠を意味するのだろうか。私が観る限りでは、色々と謎めいていてそれが魅力となっている。
         
         尚、制作には矢橋六郎が関与していたとの記録があるらしい。矢橋六郎は矢橋大理石商店を興した矢橋亮吉の六男。画家であり、また東京交通会館の《緑の散歩》などモザイク壁画もいくつか手掛けた。
         ただし、この碑は見たところ1本の御影石から出来ている。そんな硬い石から刻み出された柔和で微妙な曲面の造形に、理屈抜きで目を奪われてしまった。

                            

         建立して間もない頃の、砂浜に立つ写真が『建築写真文庫 墓碑と記念碑』(北尾春道,彰国社,1957)に掲載されていた(下1枚)。こういう立地でも様変わりは相当あると感じた。
                                             







        2012.02.04 Saturday

        旧・館林市庁舎(館林市市民センター)

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                  1963年,群馬県館林市,菊竹清訓,現存(撮影:2012年)

           思い返せば子供の頃、未来の都市像はTVメディアなどを通じて矮小化されつつ巷に溢れ、知らず知らずのうちに脳裏に刷り込まれていた。同じ世代の方なら思い当たるであろう。
           そしてメガストラクチャー志向の建築界もひとしきり終息を迎え、ポストモダン華やかな80年代になって私は建築との関わりを始め、子供の頃に見ていたそれが程度の差こそあれ「メタボリズム」によって提示された都市構想に端を発していたことに、既にそれほど現実味を感じなくなりながら気付くのだった。
                   
           「メタボリズム」の建築家達が共有していた課題、激増する人口への対処について早くから大胆に答えかつ実作を建てるまでに至ったのは、「搭状都市」や「海上都市」など垂直に伸展する都市への構想を提示した菊竹清訓である。その特徴を持つある意味でミニチュア版の都市像が1963年に竣工した館林市庁舎として実現する。しかしそれは都市を遠望する巨視的な造形性だけでなく細部のデザインも楽しめるものであった。例えばある窓は、コルビュジエのラ・トゥーレット修道院の窓を思わせる。コアの内部つまり階段の踊り場は、できるだけ開放的に見えるよう工夫されていた。(今日的視線で見た時、「未来建築」像がベニヤにペンキ塗りの天井でありレトロな建具金物が付いているのを見てマニアックに楽むことも可能。)           
                                   
           菊竹は、同じ1963年「出雲大社庁の舎」を建て、「国立京都国際会館」コンぺ案(優秀案)を発表し翌年には「東光園」を竣工させる。どれもが不朽の傑作と呼ばれることになる。まさに勢いに乗っていたのだが、1963年の周囲を見渡せばまだ日本が東京オリンピックという名の「復興宣言」を謳い上げる前年であり、同系統に類しよう丹下健三の「山梨文化会館」(1966年)にも先んずる。黒川紀章の「中銀カプセルタワー」は'70年代に入ってからの建築である。見方次第では、菊竹こそがいち早く幻視的な都市像を現実に打ち立てた人物と言えるのかも知れない。
                

           今、軽々しく「幻視的」と言ってしまったが、同氏の経歴を紐解いて言うならば、実は地を這うような現実との対峙が根底にあったとのこと。木造家屋の曳き家の仕事、古材の再利用・再生の仕事を幾度も繰り返し行った経験がメタボリズムにつながったそうなのである。(*1)なるほど「メタボリズム」というネーミングに至る以前には「輪廻転生」という名称も候補に挙がっていたらしい。そういうことであるから、少なくとも菊竹による「メタボリズム」都市は持続可能な都市への主張を含んでいた。森羅万象までをも含んだ地球環境を視野に入れつつ思索したのも恐らくそのことと関係しているのであろう。もしも単に不要な部材を更新して事足れりとする消費社会助長の発想だけだったとしたら人口が激増する地球環境への解決にはおぼつかない。
           こう再考するならばその先見性に改めて敬意を表さざるを得ない。思えばとても今日的である。つまり確かに未来へのビジョンであったのだ。

           そのようなことを思いつつ、建築家菊竹清訓の冥福を祈りたい。
                                                

          *1:「世界に名乗りを上げた〈か・かた・かたち〉」(対談 菊竹清訓,内藤廣 INAX REPORT No.171)





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