2013.09.08 Sunday
駒沢公園体育館・管制塔
1964年,東京都世田谷区,芦原義信(体育館構造:織本匠),現存(撮影:2012年)
今朝、2020年東京オリンピックの開催が決定した。日本中が喜びに沸く映像が溢れ、本当に良かったと、眠気でぼーっとしながら胸をなでおろす一日だった。
ぼーっとしついでに前回の1964年の東京オリンピックに思いを馳せてみたが、私が物心ついた頃であったので具体的な記憶はほとんど無い。だが開催が近づき聖火リレーが家の近くを通ったりして周囲の熱気がどんどん高まっていったことだけは、今でも心にしっかり焼き付いている。何も分からないながらワクワクしていた。
最近見た映画「ALWAYS 三丁目の夕日'64」でも熱気を含んで描かれていたように、あの時のオリンピックは、やはり泥沼のような戦後から這い上がり物質的な成長発展を目指した、高度成長期の希望のシンボルだったのかもしれない。
そして2020年のオリンピックはどういった大会になるのであろうか。
当然1964年当時とは時代状況が異なろうが、しかし飽食の時代と言われつつも災害を蒙ったりその他様々な問題で、精神的には希望を求めざるを得ない状態という点では変わりがないように思う。今回、そんな状況を引きずりつつ、スポーツが持つ人の心を結び付ける力をもって、より良い方向に導く役目を仰せつかったということだろう。
ロゲIOC会長が記者会見の場で、日本は開催決定が決まったからにはコンセプトをしっかりと決めなければならない、と語っていた。当たり前のようだがとても大事なこと、安手のキャッチフレーズを決めてお茶を濁すだけにならないようにして欲しいところである。コンセプト(基本理念)はすべてを統合するのだから。もちろん競技施設のあり方やデザインにまで反映されるべきものであるはず。
一例挙げれば、新国立競技場案についてもそういう観点から再検討されるべきなのかもしれない。槇文彦氏がいみじくも示した歴史的文脈やボリュームの適否の再検討と共に。
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さて駒沢公園体育館は、管制塔と共に1964年東京オリンピックに向けて建てられた芦原義信の代表作であり、またかつて多くの選手が活躍した記念すべき建築である。
建築的にも、都市空間の構造に造詣の深い芦原氏が好んだサンクンガーデン(沈床庭)の空間があり、あたかも飛翔しそうな鉄骨シェルの屋根が軽く広場に接地しているように見える。おそらく当時としてはどこにも無かった新しい建築だったのではないだろうか。
そしてこの建築も、東京オリンピックに向けた当時の人々の純粋な希望を物語っていたのではないか、と思えてならない。
2013.09.01 Sunday
駒沢陸上競技場
1964年,東京都世田谷区,村田政真(構造:横山不学),現存(撮影:2012年)
陸上競技場(現正式名称は、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場)の設計者村田政真(まさちか)(1906-1987)は、東京美校卒業後岡田信一郎や土浦亀城の事務所に勤務、戦後は独立して鉄骨シェル構造による晴海の東京国際見本市会場(2号館)やこの陸上競技場などを設計した。これら大架構の建築家として知られるが実際は様々な種類の建築を手掛けた。
よく知られるように、駒沢のこの地は、開催を返上した1940年東京オリンピックの会場として予定されていたが、戦後の1964年の東京オリンピックに際して高山英華の配置計画により、このように各競技施設が整備された。
広場の敷石には廃止された都電の線路の敷石が用いられ、美しいパターンが描かれた。また車路と歩行者の空間とを立体的に隔てる方式の広場は、当時としては全く目新しいものであった。競技場のそばにも上下をつなぐらせんのスロープがある。
競技場は、緩やかなカーブの杯のような観客席の構造体と、花びらが伏せるような庇の構造体の組み合わせがユニークでありまた美しかった。最近のことのようだが、保護のための白い塗装が施されていた。当初は打ち放しコンクリートであったはずである。
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