2015.09.27 Sunday
大阪の地下風景から
華麗な装飾が印象的な百貨店大丸心斎橋店の美しさもさることながら、実はその百貨店に至る最寄の地下鉄駅から既に、心を浮き立たせてくれるような華やかなデザインで彩られている。
これは1933(昭和8)年に完成したとされる地下鉄御堂筋線心斎橋駅。湾曲した天井には装飾的にタイルが貼られ、照明器具のデザインも昭和初期のモダンな感覚でデザインされリズミカルに配置されている。デザインは武田五一によるとのことであった。
こうしたモダンデザインの地下鉄駅は他にも梅田駅、淀屋橋駅、天王寺駅などでも行われ、特に天王寺駅では心斎橋と並んで往事のデザインがよく留められているらしいが、今回訪れたのはここだけ。他は次回の楽しみとなった。
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地下街と言えばなんといっても巨大な地下迷宮の様相を呈する梅田の地下街が知られている。JR大阪駅、北新地駅、阪急梅田駅、阪神梅田駅、地下鉄では谷町線東梅田駅、御堂筋線梅田駅、四つ橋線西梅田駅といった交通機関を結ぶ通路がある。さらに「ドージマ地下センター」,「ホワイティうめだ」,「ディアモール大阪」の地下街があり交錯しつつ拡張していったという具合。
いつしかその「ホワイティうめだ」の東の端に行き着いて驚いた。迷宮の果て、辺境で途方に暮れつつ思いがけず目にしたものは噴水のある泉。妙に明るく湿気を帯びた空気に満たされた空間は、しかし割と心地よい待ち合わせ空間でもあった。
この「泉の広場」が誕生したのは1970年ということなので、大阪万博と何かしら関係しているのだろうか?ちなみに床のモザイクにはイタリアはミラノのガレリアの床モザイクのデザインを取り入れたらしい。
夜、明るく照らされた行き交う人影は、かえって幻のようにも感じられる。もっともここが明るい空間になったのは1987年に改装されたことにもよるようだ。その前はもっと陰うつな場所だったのだろうか。それゆえなのか都市伝説もあるそうな。
「赤い服を着た女が出る」云々
2015.09.05 Saturday
大丸心斎橋店本館
1933年,大阪府大阪市中央区,ウィリアム・メレル・ヴォーリズ,現存(撮影:2014年)
昨年、甲子園へ高校野球の応援に行こうとした時のこと、折悪く台風の直撃に合い数日間関西で足止めとなってしまった。それでも雨の降りしきる中「建物見たい病」の発作に抗することはできず、とりあえず地下鉄に乗った。そして大雨でも内部が見どころ満載の建物をふと思い出した。心斎橋の大丸。もっとも外観も大したものなのだが。
雨の合い間を縫って撮った外観はゴシック風を基調としているというべきか。もっともデパートということもあってか自由な装飾で肩の凝らない楽しさがある。
(▼)これは階段室に掲げられていた竣工当時の写真プレート。見ると低層部、中層部、上層部と塔屋の三段構成のファサードとなっていることが分かる。御影石、タイル、テラコッタ、それぞれ異なる外装材が貼られている。
(▼)あの有名なピーコックに遭遇。入口天井にも華やかな装飾。
内部はそれこそ目を見張る装飾空間。そのどれもが本物であり、つまりコマーシャリズムの延長線上で一時的に貼りつけたものでは決してない。だから感動も大きい。どこかの宮殿にありそうな、一般には縁遠いであろう質の高い装飾空間を、大阪近辺の人々は80年以上だれでも普通に目にすることができたのであるから羨ましい限り。
付け加えて言えば、それを易々と建替えてしまおうとする度胸にも驚かされる(精一杯の皮肉を込めて)。教会堂を多数設計したヴォーリズの代表作、ある意味最大規模の聖なる空間がここにあると言えるかもしれないのにもかかわらず。
(▼)エレベーターには大胆なアールデコ装飾。ややアラベスク風でもあり、ゴシック風の装飾も
(▼)さらに以前は大きな天窓採光吹き抜け空間があった(階段室掲示の写真プレート)
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